10年めの一年生

雑記

たいていのことは、ただ闇雲にたくさん数をこなしたからと言って達人になれるとは限らない。

もちろん、世の中には無心で積み重ねるだけでその分野の頂に到達する人もいるだろう。
でも、ほとんどの場合は「どれだけたくさん考えて、そして実際にたくさん行動に移したか」が結果につながっていくもの。

ある道に習熟するためには、「考えるだけ」でも「行動するだけ」でもダメ、「両方を行う」だけでもまだ足りず、それを「繰り返し続ける」ことが何よりも大切なのだと思う。


自分の場合、キャンプとバイクに関しては恥ずかしながら、「時間と回数だけは重ねているのに、考えることをおざなりにしてきたために未だに素人」の典型だ。

そんな自分に、最近変化が訪れた。
今回はそういうことを書いてみる。



アウトドアライフ一年生

たとえば、キャンプについて。

これまで、自分の行う「テント泊」とは「日中はめいっぱい行動して、日が暮れたら設営してすぐ寝て、日が昇ったら即撤収するもの」だった。
旅先での限られた時間の中で、夜明けから日暮れまでめいっぱいあちこち巡りたいからだ。


野外活動アウトドアライフを楽しむことが主目的の「キャンプ」ではなく、登山用語で言う「フォーキャスト・ビバーク(予定露営)」に近いかもしれない。


そうしたスタイルは自転車で日本一周をしているときに必要にせまられて身についたもので、そのさらに根底には、風雨来記の初代主人公、轍さんの「行けるところまで行って疲れたらそこで寝る」という言葉と旅に対する姿勢が、自分の価値観形成に強く影響しているんだと思う。




今までにテント泊をした回数だけなら五百回を超えているから、自立式のテントをたてるだけならそれなりにスムーズにできる。
その一方で「快適に、便利に、アウトドアを楽しむ方法」に関しては全くの無知だ。
キャンプ漫画を愛読している人の方がよっぽど詳しいと思う。


元々キャンプ道具にあまりこだわりもなかったから、日本一周のときに使ったテントはホームセンターの安いテントだったし、岐阜や島根の旅の時は、コスパで選んだワークマンのテント&シュラフ+100円ショップのテントマットで行ったくらいだ。


そんななので、たとえば友人にキャンプに誘われて行ったときも、はじめて見る使い方もよく分からないようなアウトドアグッズの数々にあたふたし、「こいつ本当にキャンプ経験あるのか?」みたいな顔をされて恥ずかしい思いをすることもあった。

あのときは、風雨来記4内で見た「アルミホイルに食材を包んで焼く調理(おにぎりとか)」をすることで、なんとか面目躍如ができた(かもしれない)。
ありがとう風雨来記4。



そんな自分だったけれど、今年のバイク旅に向けて装備を一新しようとあれこれ調べているうちに、最近急にキャンプ用品の世界に興味を覚え始めた。


特に今年はレンタルバイクを借りての旅にもチャレンジしてみようと思っている。
仕事柄ある程度まとまった休みをとれる機会は年に一度か二度しかない。
でも、飛行機で移動して、行った先でバイクを借りて走るという旅の形なら、今まで時間が足りなくてあきらめていた場所へも行動範囲が広がることに気付いたのだ。

慣れないレンタルのバイクで旅するなら、『できるだけ荷物を身軽に、コンパクトにしたい』。

今回このテーマ……つまり、吟味するための物差しがあったので、よりキャンプ用品に対する知識や理解が深まりやすかったように思う。



そうして調べてみるとたとえば、テントひとつとってもものすごく奥が深い。
いろんなメーカーが色んな素材、色んな思想で多彩なテントを開発、展開している。

ただ寝ることだけに特化した地を這うようなテントや、カサを開くように数秒でたてられるテント最先端素材を使ったありえないくらい軽いテントキャンプベッドの上に立てられる高床式テントバイクの車庫付きテント、風速180キロにも耐える約100万円するハイエンドテントなど、バラエティ豊かにも程がある。


そんな中で『自分のやりたい旅スタイルにピッタリのテント』を見つけたときには、こんなものがあったのか、なんで今までちゃんと調べようとさえしなかったんだ!と過去の自分の不勉強を悔やんだほどだ。



キャンプマット(テントの床に敷くマット)もそうで、自分はキャンプマットと言えば「ウレタンみたいな弾力性ある素材がくるくる巻かれた(あるいは折りたたまれた)軽くて嵩張るやつ」という認識しかなかったけど、風船のように空気を入れるタイプ「エアマット」とか、空気とウレタンの組み合わせで寝心地最高の「インフレーターマット」というようなタイプがあることをはじめて知った。

一昨年夏の岐阜、そして昨年夏の島根旅において、マットが積み荷の中で嵩張る割に寝心地が悪くて(地面からの熱気が暑すぎて)かなりストレスがあったので、今年は軽量コンパクトのマットに買い換えてみようと思う。




あとは、「メスティン」。
長方形タイプの飯ごうだ。

メスティンについて自分は今まで存在すら知らなかった。
昔ながらの大きな飯ごうとか、丸い形のコッヘルで自分の認識は完全に止まっていた。

しかし珍しいどころかこれ、現代のキャンプ調理具の中では超定番のアイテムらしい。
確かに、そうと意識してみると、ホームセンターはもちろんダイソーでもワークマンでもたくさん積んで置かれていた。

数百円で売られていたので試しにひとつ購入してお米を炊いてみると、すごく火の通りがよく、短時間でおいしく炊けた。
調理だけでなく、長方形の形状故に洗いやすいので後片付けもラクで、荷物にも収納しやすい。

キャンプでしばらくこれ使ってみようかなと思う。





そんな感じで、まだまだショッピングサイトや動画サイトなどで色々なラインナップや紹介を見て、ワクワクしている最中だ。
これまでの知識が乏しいぶん、新鮮な発見がたくさんある。

自分の中に、興味の幅がまた広がったことが嬉しい。
4月は新入生の季節。

これを機に、「アウトドア一年生」としてじっくりと、自分のスタイルにあったアイテムを見つけ、揃えていく楽しみを味わっていこうと思う。






ライダー一年生

バイクも同じ事が言える。


乗り始めて10年、距離だけなら10万キロ以上走ってきたけれど、それはただ走ってきただけ。
当初こそ張り切って色んなところをツーリングに行ったものの、その後大半の期間は通勤や用事のための手段としてだけ乗っていた。
「バイク乗り(ライダー)」ではなく、「バイク利用者」だったと思う。


「バイク乗り」と「バイク利用者」の違い。
これは車で考えてみると分かりやすい。

「ドライブが趣味だったり、車のドレスアップにこだわっている車大好きな人」と「便利だから、あるいは必要に迫られて車を利用しているだけ人」は、カーライフに求めるものが全然違う。

バイクの場合も同じ。
「便利だから、必要だからバイクに乗っている」という人もたくさんいるという話だ。


これは別にどっちが偉いとかいうことはなく、人それぞれの価値観があるのだからバイクとの付き合い方も人によって違って当たり前だ。


自分の場合は風雨来記4と出会ってからの二年半、頻繁にツーリングに出かけるようになったものの、精神性は長らく「バイク利用者」のままだったと思う。



それが一番顕著に分かるのが、安全への意識だ。
自分はこれまで、「プロテクター(身体の重要部位を守る装備品)」というものを一度も着用したことがなかった。

ずっと普段着で乗り続けてきた。
暑い夏場はTシャツ一枚で走るのが普通だったし、靴もたいていスニーカーだった。


理由はふたつあって、ひとつは、プロテクターの存在は知っていても、それがどれくらい効果があるのかやどんな風に着用するものなのかなどの知識がなかったから。
教習所では、ヘルメットとグローブの着用は教えられたが、ボディプロテクターについては「安全のためにつけるのが望ましい」くらいの紹介だった。





理由のもうひとつは、「自分にとってのバイクはこれまであくまでも『行きたい場所に行くための便利で素敵な手段』であり、『目的』ではなかった」から。

目的はバイクで行った「先」にある。
だから、行ってからのフットワークの軽さ――バイクを降りればそのままノータイムですぐ探索や登山に移れる、用事が終わればそのままバイクにまたがって再発進できる――を重視していた。

そうすると、自然と普段着やトレッキングウェアばかりを選んでしまう。
プロテクターで利便性が損なわれるのを無意識に忌避していたと思う。



プロテクターなどのしっかりとした装備はバイクに乗ることを目的とする「ライダー」の人たちが身につけるもの。
「一般バイク利用者」である自分の場合は、ヘルメットとグローブ(とできれば長袖、長ズボン、安全靴)くらいで充分。

そんな感じの認識だった。

それ自体は別に間違っていたとは思っていない。
ただ、知識があって自分の意志で軽装備を選択するのと、何も知らないまま、知ろうともしないまま何となくやっているのとでは大きな違いがあると今は思う。



そんな風に考えるようになったきっかけは、キャンプと同じく「今年レンタルバイクでの旅に挑戦してみよう」と計画したことだった。


レンタルバイクだけなら「バイク利用者」も借りるかもしれない。
でも、レンタルバイク、それも最新機種を選んでツーリングなんて、それは「バイクが好きな」人――「ライダー」しかやらないことだろう。
つまり、自分も「ライダー」としての魂を確かに持っていたことになる。


そんなことを自覚すると、ほんの二、三週間の間で急激に自分の中の価値観が変わって、ライディングウェアやグローブ、シューズ、バイク周りのいろいろなアイテムを見るのが楽しくなった。
ああ、自分もそっち側に行ってもいいのかと。


ライディングウェアの世界もまた、奥深い。
なにせ「直接命に関わる」アイテムなので、作り込みというか工夫というか執念というか……独特の機能美のようなものを感じられるアイテムが多くてすごく興味深い。



たとえばヘルメット。
安いヘルメットは数千円からあって、高いものだと5~6万円を越える。
今までなんとなく「高いヘルメットはそのぶん防御力がめちゃくちゃ高いんだろうな」というくらいの意識だった。

ただ、いろいろ調べてみると、高いヘルメットはただ「内部への防御力が高い」というだけで高価なわけではない。

値段に見合った素材・構造を使用するゆえに「軽く」「小さく」、「空気抵抗を軽減させが少なくて」「高速走行中も静か」で「かぶり心地が良い」「デザインも良い」「便利機能(曇り防止やサンシェードなど)もたくさんついている」など、総合的に「頭にかぶる装備」として高い性能を備えているようだ。
なるほど、機能を聞けば高い理由も納得できる。



ちなみに、自分が調べた限りでは風雨来記4の主人公が愛用しているのは、Araiの「ASTRAL-X」というツーリング特化モデル。(と思う)
ツーリング特化というのは、たぶん長時間つけて走ることを想定した仕様が盛り込まれているんだろう。
今は絶版になっていて、後継のASTRAL-Xが販売中らしい。

自分も次にヘルメットを買うときは、このシリーズを選んでみようかなと思う。




また同じ安全装備のひとつ、プロテクター。
これも面白くて、自分は今まで外側につけるヨロイというか、野球のキャッチャーみたいなものしか知らなかったけど、服の内側や専用ポケットに装着するやわらかくて薄いものから堅くて分厚いもの、穴が空いて風を通すものなど色々なタイプがあるようだ。


バイク用エアバッグの存在を知ったときは衝撃を受けた。
文字通り、事故の際に「まばたきするよりも早く」膨らんで着用者を守る「着るエアバッグ」。
まるで、ファンタジーに出てくる魔法の鎧のようだ。


そんな風にあれこれみていると、キャンプ用品に続いてバイク用品についても「なんで自分はこれだけバイクに乗ってきたのに今まで全く興味を持たなかったんだろう」と呆れてしまうくらい、奥深くて面白い世界だと思った。



というわけで「ライダー一年生」として、あらためてこれからバイクに乗るための自分なりの装備を整えてみるつもりでいる。
是非お気に入りのアイテムを身につけて、今までより一歩安全により楽しく、バイクライフを体験していこうと思う。






理想としては…

バイク用品のラインナップをざっと見てみたけど、これぞライダーって感じのかっちりしたライディングウェアの他、普段着としても着られるデザインのウェア(プロテクターは完備)もけっこうある。
一見バイク用とは思えないようなオシャレなものも。


一方で、山とか森とか川での活動との両立をコンセプトにしたバイクウェアは、自分が探した範囲では見つけられなかった。
山の中とかでも、肘や肩、背中に入ったパッドが(あくまでも副次的な効果として)役に立つシーンはありそうな気はするんだけど。


自分の旅のスタイルとしては、たとえば去年の島根にしても、その前の岐阜にしても、神社や遺跡を多く巡る過程で鬱蒼とした森だったり、ちょっとした山だったりを散策することが多い。
そういう旅ではバイクの乗り降りの際に着替えたりすることなく、着たまま野外活動でも使えるジャケットがあればいいなと思う。

もう少し調べてみよう。


なににしろ、キャンプ用品にしろバイク用品にしろ、こんな風に「自分がこういうものを求めている」と言語化できるのは、これまでの時間があったからこそだ。

自分の理想の装備、あせらずゆっくり模索していこうと思う。






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