「岐阜のピラミッド」 風雨来記4を追いかけて / 2024岐阜の旅・夏その3

2024岐阜の旅

ギフのピラミッド

ふう、ふう……
特に案内表示もない山の中、ただ先人によって踏み固められたようにみえるところを辿っていく。
汗だくになってちょっと休憩しようかと考えた頃、ようやく辿り着いた。






これが岐阜のピラミッド、金生山――!





思っていた以上に、スケールが大きい。
眼下で作業している(巨大なはずの)重機が良く出来たミニチュア、あるいは小さなアリのようにさえ見える。


……こうしてみると、4~5年前に撮影しただろう風雨来記4作中と比べて、だいぶ「背丈が縮んで」いる印象だ。
エジプトというより、アステカ文明のピラミッドみたいなシルエットになってる。






このアングルなどは分かりやすいだろうか。
以前は奥に見える山より高いところに山頂があったのに、ピラミッドで言えばキーストーンにあたるてっぺんの五段ほどが削り取られている。








元々ここには赤坂山(金生山)、更紗山、愛宕山、月見山、花岡山というようないくつもの峰(ピーク)があったらしいが、今は削り取られてほとんど残っていない。

唯一開発をまぬがれたのが、山上寺院「明星輪寺」の付近。
そちらでは昔ながらというか、この山本来の姿が見られるそうなので、このあとそちらにも行ってみよう。







姿は多少変わってしまったけど、あの日あの人が見た景色が無くなる前に自分のこの目で見られて、本当によかった。







赤い山




金生山は、距離的には赤坂宿から歩いてすぐのところにあるけれど、道が急激な登り坂になっていて徒歩で登頂するのはけっこうハードだ。
平地にある町の中からいきなり「山!」が盛り上がっている。
そのぶん、登ってしまえば眺めはばつぐんだった。


主人公、よくこの坂を徒歩で登ったなぁ……









この金生山、やたら歴史が古い山らしい。

自然科学分野で言えば、2億5千万年以上前(ペルム紀)の化石が豊富で、「日本古生物学発祥の地」と呼ばれるくらい数多くの化石が発見されてきた、有名な場所だという。

化石館




歴史的にも、1300年以上前の奈良時代に信仰の山として開かれたという記録がある(現在も残る明星輪寺)。

さらに古墳時代まで遡れば、金生山の麓には、約150メートルという岐阜県最大の前方後円墳「昼飯大塚古墳」があり、この地域が古代美濃の頃から重要な地域だったことは間違いない。


現在は「化石」や良質な「石灰石」「大理石」などの産出地として注目されるが、古代ではこの山で産出する「赤鉄鉱」の鉱脈が非常に重要視されていたという。
つまり、「戦いで使用する鉄製品の供給源」として。




ふと、自分の脳裏に、一連の要素がかちりとつながった気がした。



以前、はじめて岐阜を訪れた際に、西濃の伊富岐神社(ヤマタノオロチを祀る神社)を訪れた。
そのとき、ヤマタノオロチは製鉄民族の象徴という説があること、この周辺地域には火や雷、鍛冶製鉄に関する神を祀る神社が集中していることを書いた。


日本の鍛冶製鉄・鉱山を司る「金山彦神」を祀る総本山「南宮大社」も同じエリアにある。
古代史上最大の戦乱、壬申の乱で大海人皇子(後の天武天皇)が陣を置いて指揮をとったのも、ここ。


金生山の赤鉄鉱脈からもたらされた大量の鉄製武器が、あるいは神格化され、あるいは乱を成功に導いたのかもしれない。



金生山神社





もうちょっと身近なところでは、「関の刃物」は現代でも有名ブランドだが、そのブランドを作り上げた刀鍛冶集団「関の孫六」。

孫六は関に本拠を移した初代の名前で、それ以前つまり孫六のひとつ先代までは、この赤坂が刀鍛冶集団の一大本拠地だったそうだ。



それくらい美濃赤坂は、古代から中世にかけて、「鉄」を象徴とする土地だったのだ。











今の金生山は石灰石のイメージが強い。
石灰石といえばついつい白い、という印象を抱く。

だから金生山の色は何色か、と問われればついつい印象だけで「白」と答えそうになる。


けれど、あらためてよく山肌をみると――――






「赤い」
赤い山だ。

赤鉄の鉱脈は今ではほぼすべて採り尽くされてしまったが、この粘土質の土には今もなおたくさんの赤鉄鉱を含んでいるため、こうした「赤い山容」になっているのだそうだ。



「金生山」の語源は「鉄が産出する山」という意味だと想像ができる。
同じく、「赤坂」という地名も元々は、もしかしたら「赤鉄のとれる山」という意味だったのかもしれない。





クマ、出ます

ところで、金生山って、なんと読むんだろう。

「かなぶやま」?
「かなぶさん」?
それとも「きんしょうざん」?






風雨来記4作中ではルビが振ってあって、「かなぶやま」とあった。
詳しく調べてみるとどうも、正式名称は「かなぶやま」で、ふだん多く使われる通称は「きんしょうざん」……という風に使い分けられているようだが、それもはっきりと決まっているものでもないようだ。


個人的には、「きんしょうざん」の方が覚えやすいかも。
ここからも見える、岐阜市内の「金華山(きんかざん)」と対みたいで。








さて、次は明星輪寺の方へ行ってみよう。












道中個人的にびっくりしたのが、山道にたてられていた看板。




町のそばだからと完全に油断していた。
出るのか、クマ……。





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